第2章「ESCAPE」
....#48 離れゆく心
恐ろしいものを見るように、はっと顔を上げてセシルの背中を見た。遠い。セシルはもう、自分がここにいることを忘れてしまったように思える。 「忠告しておきます。二度とわが国にたてつくような真似はなさらぬことです」 「!」 何を言っているのだろう、この人は。 「さもなくばあなたもベルナルド公のように、愚かな王として歴史に名を残すことになりましょう」 ダムシアン王と、王子が死んだ? 誰が……まさか、セシル? 何? 馬鹿なことを。 そんな冷たい言葉を、そんな冷たい声で……その血に濡れた手で。 「……ぁ……ああ……」 セシル! セシル! |