第2章「ESCAPE」
....#47 セシルの想い
ダムシアンの二人の王子のことは有名である。 先ほどクリスタルの間で会った勇ましい青年は、おそらく兄王子フィリップ。目の前で恋人に取りすがって泣いているのは、弟王子ギルバート。 声をかけられて恐る恐る振り返ったギルバートは細面の美しい青年で、優しげな容貌は兄と好対照であると感じられる。だが、その兄と彼の父はもうこの世にいない。 「私は、バロン空軍のセシルです」 「…………」 「あなたの父上と兄上はお亡くなりになりました」 青ざめた顔で自分をただ見つめるギルバート。セシルは構わず続ける。 自分の未練を断ち切るように、ローザにも聞こえるように……そう、悲しむくらいなら憎んで欲しい。 (そんな風に悲しく泣いているのを見るのは嫌なんだ) |