第2章「ESCAPE」

....#41 闇の魂


気がつくと、セシルは血みどろのクリスタルの間に立ちつくしていた。魂が抜けたような表情、もう随分長い間こうしているようだった。指先がじんと冷たい。

やがて、他人の血がこびりついた手をそろそろと伸ばすと、台座のクリスタルは呆気ないただの宝石の質感と共に彼の手の中に収まった。

部屋を満たしていた光は吸い込まれるように消えてゆき、後に残されたのは三つの亡骸と、背の高い一人の影。
そしてセシルはゆっくりと歩き出した。

闇だか光だかわからないただまぶしくくて重い何かが頭の中を抱え込む。気が狂いそう、いつもこうだ。子供の頃はもっと酷かった。今は力を使ってもどこも痛くならなくなったが、これだけはなくならない。早く飛空挺に戻って眠ろう。

眠って、起きたら楽になるんだ。

足が重い。辿ってきた道にはまばらに死体らしきものが転がっていて、辺り一面血と硝煙のにおいで胸が悪くなる。堅い靴音が耳にうるさい。

出口はどこだろう、はやく戻りたい。






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