第1章「A Day of spring」
....#36 近衛兵長ジェネラル(2)
拳銃を手にしたジェネラルがすぐ前に立っている。 冷たく思えるほどに明るいプラチナブロンド。男はローザを見る。どうやら、彼女に気が付いたようだった。 「娘……いや、これは……。ファレル隊長の……」 少し驚いた様子でジェネラルはつぶやいた。 「あなたが何故ここに? ……しかし……かばいだてすると怪我をしますよ?」 「こんなこと……許されるはずないもの」 「心外な。私は正式に任務でここに来ているのです」 「陛下がそんなことなさるはずないわ」 「学生風情が生意気な口をきく。自分が何をしているのかわかっているのか?」 「セシルは……セシルは今日のこと、知ってるの?」 「あなたと無駄話をしている暇はない。そこを、どきなさい」 拳銃を少女に向け、緑色の目を細めてジェネラルが笑う。 「私は脅しているわけではない。死にたくなかったら……」 「いやよ! ……どかないわ……」 言葉を遮り、きつい目でジェネラルを睨んでローザは言った。 恐怖はあった。しかしここまできて退くわけにはいかなかった。子供を殺すような任務を、王やセシルが許すとは思いたくない。 「知りませんよ?」 引き金に指をかける。 ローザは目を伏せる。 いつの間にか霧の竜はその形を失い、たちこめていた霧もはれかけていた。 |