第1章「A Day of spring」
....#35 近衛兵長ジェネラル
辺りはうって変わって静寂に包まれていた。 たゆたう風がほんの少しづつ霧を晴らしていく。 沈黙と死のにおいが染み渡る広場に低く響く勝ち誇った男の言葉。 もうこれでこの任務は終わる。あえて口を出す気にもなれない。好きにすればいい。さっさとローザを探して戻ろうと思っていた。 しかしその刹那。 「ジェネラルさんやめてっ!」 切羽詰まった少女の声……あれは。 驚いて声のした方を見る。 うっすらとだが、親子を庇ってジェネラルの前に立ちはだかるローザの姿が見えた。 思わず混乱して我が目を疑う。 何が起こっているのか理解するのに嫌に時間がかかる。 だが、あれはやはりローザだ。 燃えるミストを見てくると言い残してメアリの元を飛び出したローザが、たぶん、この街で自分を探して、そして……今、召喚士の子供を庇って、ジェネラルの前に立っている。 一体何がどうなればこの状況につながるのか。だがもうそんなことを悠長に悩んでいられる状況ではなかった。 (ローザ……よりによって、こんな所に) 彼女がこんな所に出てきたのでは、無視して様子を見ているわけにはいかない。なにか話しているようであったが、ジェネラルはこともあろうにローザにまで拳銃を向けているのだ。 |