第2章「ESCAPE」
....#50 絶望の中で
セシル!
セシル!
意識が遠のく混乱の中、ローザはギルバートが斬りかかるのを見た。セシルは避けようとしない。
ああもう、何もかもわからない。このまま闇の中へ落ちてゆこう。その方が楽になれる。
ローザが意識を手放そうとしたまさにその時だった。
広間にぶっきらぼうな怒鳴り声が響く。
あれは……たぶん、カイン。
とても怒っている、カインの声。
その後もなにやら怒鳴っているのが遠く聞こえたが、もはやローザの朦朧とした意識のなかでは、すべては遠く曖昧ではっきりした記憶としての形を成さなかった。
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