第1章「A Day of spring」
....#25 不審な飛空艇
広々と城下町を見渡せる石の回廊で、セシルはひとりたたずんで彼方の山を見つめていた。出動命令を出した覚えのない飛空艇があの山の向こうに消えていったのはつい先ほどのことだ。 (どうして飛空艇が動いたんだ? そんな話は聞いていないのに……) 空軍に所属する飛空艇が自分の許可なしに出動することがあり得ないのは、当然彼自身よくわかっている。 (だいたいあの方角じゃあ行き先はミストのはず。市街地に軍艦を乗り入れて何するつもりだ……?) 嫌な予感がしてセシルは眉をひそめた。 (……攻撃?……) その場に立ち止まったセシルは、その場でしばらく考え込んでいたが、やがて、ためいきをついて歩き出した。 「やってられないね。休暇中なのにさ」 |