第1章ミスト編

....#4 不安



「あのひとたちなに?おかあさんは?」


兵士達がいなくなったあと、僅かばかり緊張が解けた部屋の中でリディアは心配そうに窓をのぞき込んでいた。

兵士達が去ったのに、母が戻ってこない。

踏み台を持ち出して、小さな体で精一杯背伸びして母の姿を探している。
寝たきりの生活が続く長老の部屋には、街の住民が多く逃げ込んでいた。

皆一様に暗い顔で、言葉少なにただ時が過ぎるのを待っていた。


「リディアちゃん!あんまり顔を出したらダメよ」


窓際に立つリディアを、先ほどステラと入れ替わりで部屋に入ってきた娘があわてて止める。


「でも……」


閉め切った部屋は薄暗く、リディアが外を見るためにほんの少し開けたカーテンの隙間から、 まだ高い午後の日差しが差し込んでいた。
ぴんと張りつめた冷たい部屋の埃が、光を受けて漂っている。


「おかあさん……」


リディアはやはり心配そうに外をみていた。



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