第1章ミスト編
....#15 母子の別れ
辺りは静まりかえっていた。 我に返り、自分が夢を見ていたことに気づくが、眠っていたわけではないようだ。 ただ、自分を抱きしめていた母が今は力無く横たわっている。 一瞬なぜだかわからなくて混乱したが、 母の髪が夢の男と同じ緑なのがわかったとたん、危機の中にあった自分の状況が甦ってきた。 こちらを向いていた銃口。けれど……自分は死ななかったのだろうか。 飛び出してきたローザはどうなったのだろう。 ふと頭上を見ると、煙の切れ間から星が見える……なにかおかしい。 ああ、飛空挺がいなくなっているのだ。 そして、あの竜も。 「おかあさん……」 呼ぶと母は苦しげに目を開けた。漆黒であるはずのその瞳は、やはりあの男と同じ深緑。 「……リディア」 そして聞こえないくらい小さな声で、そっと囁く。 逃げなさいと。 |