第1章ミスト編
....#13 ミストドラゴン(2)
「ほう?子供か?」 無遠慮な声が割り込んでくる。 土を踏む靴音、リディアが見上げると目の前に金髪の軍人が立っていた。 威圧的な黒い軍服に、冷たく笑う瞳。なんて恐い大人だろう。 「……丁度良い。」 男はゆっくりと二人の方に銃口を向ける。 (お母さん……) ステラは力の入らぬ手でリディアの庇うように抱く。 もう彼女にここから逃げ出す力は残されていないようだった。 「芽は早いうちに、摘んだ方がいい……お前も、母とともに死ね」 リディアは目を見張る。男の言葉の意味がわからない。 でも…… いやだ。 恐い! 逃げようおかあさん! 「ジェネラルさんやめてっ!」 「!?」 飛び出してきたローザの声と、憮然とした様子で彼女の方を向く男を見ながら、 リディアはなぜか気が遠くなっていくのを感じていた。 目の前に、ひらりと舞い落ちる小さな光。 見上げると、雪のように小さな光が舞い落ちている。なんだろうこれは…… どうしてだろう。 すごく悲しい。 それは、徐々に霧散していくミストドラゴンのかけら。 「…………」 言い争う二人の声がだんだんと遠くなる。 リディアは目を閉じた。 悲しい。 「…………」 ああ、そうか。あの竜が…… もう消えてしまうからだ。 |