第3章「UNBALANCE」

....#4 新たな影


「何のつもりですかな」


軍人達が去った謁見の間で、王は低く呟いた。二人の大臣が無言で見守る中、ゴルベーザと呼ばれた男は少し意地の悪い笑みを浮かべる。


「人助けですよ。お困りでしょう? 飼い犬に逃げられて」

「…………」

「冗談ですよ、しかし、本当に可愛がっておいでのようですね」

「……あれには力がある。それだけだよ」


からかうような調子の男を苦い顔でかわして、王は雨の落ちる窓辺へ立つ。その様子を横目で見ていた男も、くすくす笑いながら横に立った。


「全く……素直でない方だ」


雨足は次第に強くなり、覆い被さるような水音はまるで窓辺に立つ二人を隠そうとでもするかのようにも思える。

戻らぬ息子を待つ王の横顔は険しい。



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