第1章「A Day of spring」

....#19 ピクニック前編


正午も近くなる頃、ローザとメアリの姿は町の北部に広がる高地にあった。
彼女らの家から車なら二時間もかからないくらいの所なのだが、驚くほど自然が残されていて美しい。いつもは遠く霞んで見える山々がぐんと近く見えた。


「いい空気! いいお天気! いい眺め! 来て良かったねっ!」


ローザは上機嫌である。歌うような雲雀の鳴き声が遠く近く耳に届く。柔らかい草を踏んで、新緑に包まれた山の方へと歩いてゆく。

このあたりはバロンの人間にとってはなじみのハイキングコースで、ローザ達もこの季節にはいつも遊びに来るのだった。しかし、休日ともなると麓の方はそれこそハイキング客でごったがえすので、彼女らはいつも車を止めてから二時間も三時間も歩く。

そうするとやがて人影もまばらになり、誰にも邪魔されずにギア・ナの風景とおいしい空気を満喫することができるのだ。


「セシルちゃん、元気だった?」


先を行くローザにメアリが尋ねた。


「元気だったよ。そのうち遊びに行くって」


「あら、嬉しいわね。私も久しぶりに顔が見たいわ。きっと相変わらずの美人なんでしょうね」


「うん。相変わらずだったよ。きれーだった」


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