第3章「UNBALANCE」

....#3 夜の入り口


突然、がたりと馬車が止まり、うつむいて無言だった三人ははっと顔を上げた。
車輪の音が止み、雨音がいっそうクリアに響く。


「今日は暗いからもう先に進むのはやめだって!」


リディアがそう言うのとほぼ同時に、ロアが後方の出入口を開けた。


「雨も降ってますからね。丁度、僕たちが野営したりするのによく使う小屋がありますから、今夜はここに泊まりましょう」

「何もかもまかせちゃって、わるいねロア」


ぱっと表情を変えてにこやかにそう言うと、セシルは馬車を出た。先日無造作に自分で切り落とした髪は短く切りそろえられていた。


「いいえ、僕は仕事ですし……よいしょ」

「手伝うよ」


セシルは、爪先立ちになって仕切りの布を留めようとしているロアの手からひょいと布はしを取ると、てきぱき作業をし始める。


「すいません……じゃあ、僕、荷物おろします。ローザさん達、先に中に入っててください」

「はーい」


リディアが元気良く答える。ローザとリディアは雨を避けながらすぐ前の小屋に入った。



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