第2章「ESCAPE」

....#45 慟哭、そして


溢れ出す涙を拭おうともせず狂ったように叫んで、力無く折れるように崩れ落ち、白い石の床に両手をついて激しく嗚咽する。
こんな状態のローザを目にするのは初めてで、第一こういう場所で彼女にどんな顔をすればいいのかわからない。セシルは困り果てた様子で震える少女の肩を見下ろしていた。


「やっとお父さんに許しをもらえたって、すごく……すごくうれしそうに話してたんだよ?」


「幸せだったんだよ?!」


声にならない声でそう言って、また苦しそうに涙を流す。


「ローザ……落ち着いて……」


なんとかそう言うのがやっとだった。ローザはここでアンナという人を亡くしたのだろう。おそらくは自分の部下の手によって。

その人がローザにとってどのような存在だったのかはわからない。だが、彼女にとってこの戦場と誰かの死が衝撃的なものであることは想像できる。彼女はこんな場所とは無縁であるべきなのに。

こんな場所で、こんな風に泣くことなど、ローザにはあってはならないのだ。

やがて少女は起きあがろうとしたが、立ち上がろうとしても足に力が入らない。よろめいたローザを支えようとしてセシルが手首をつかもうとした。






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