第2章「ESCAPE」

....#26 見送るもの


セシルの命令を受け、三機の飛空挺はダムシアン城前まで強行、そこで着陸した。城壁にずらりと並んだダムシアン兵から激しい発砲が浴びせられる。飛空挺内では、セシルと共に城内突入をはかる空軍の精鋭戦闘部隊が、完全武装の上その時を待っていた。

「援護射撃、用意を!」

操舵室に残ったエイリは、隊長不在の飛空挺を指揮することになる。
彼の任務はただ、艦を守ること。

城門前にはダムシアン軍の防衛前線。ざっと見て数百名、常設部隊であろう。城内にはまだ兵力があると思われるが、どちらにしろ大した数ではないはずだ。セシル率いる実行部隊は百名足らずだが、バロンで最も優秀な者を集めて組織された部隊である。負けるはずはない。

しかしエイリはいつも祈るような気持ちで彼らを送り出すのだ。優しげな形のる蒼い目に緊張が走る。

セシルはいつも彼のことを軍人には向いてないと言って笑った。
本当はそんなこと自分でもわかっている。空軍の仕事より、商人である実家の仕事を継いだほうがどんなに楽であることか。

だが。

「隊長、用意ができました」

手にした無線機に低く呟く。自ら望んでこの道を歩き始めて十四年。後戻りが出来ないのは自分だって同じなのだ。



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