第2章「ESCAPE」

....#23 戦争と平和


「お前はフィアンセのところに行ってやりなさい。ギルバート」


戦いの準備が進められるなか、ギルバートはただただ呆然と広間に立ちつくしていた。

ダムシアンが戦争をするのか。バロンと?


(父上、兄上……)


バロンには勝てない、皆わかっているはずではないのか。
戦わない勇気と誇りもまたあるはずなのに。


大臣達はそれぞれの持ち場へ散っていった。ある者は戦いの準備のため、ある者は国民の避難の手筈をとるため。王の間には王と、二人の王子、数人の側近が残されていた。


「ギルバート、お前は来なくて良いからな」


兄王子のフィリップがそう言って笑顔を見せた。


「大丈夫さ、クリスタルの間はこのまだ奥なんだぞ。皆で守るんだ、守れるさ」

「ギル様、おはやくアンナ様の元へ」

「しかし、僕も一緒に……」

「……お前は国のことに縛られなくて良いんだ」

「兄上……僕は……」

「だいたい、お前には向いていないよ。これは、戦争なんだ。」

「ですが兄上!」

「ギル様、心配なさらなくても大丈夫ですよ。」

「ここは危ない、はやくここを離れるのだぞギル」

「父上っ!」


王はそう言うと、フィリップと側近を伴い、奥にあるクリスタルの間へと消えていった。扉の閉まる重い音、それから、厳重に内側から鍵をかける音が響く。

後に残されたのは、茫然自失のギルバート、唯一人。

外の方は騒がしくなってきている。そして、時折轟く威嚇砲撃……今朝は皆、嬉々として婚礼の準備に走り回っていたというのに。


「どうしてです、父上、兄上


……戦わずに済むなら、それで良いではありませんか……」




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