第2章「ESCAPE」

....#14 大陸縦断鉄道(4)


やがて太陽が傾き、砂の地平に沈みはじめる。窓の外が暗くなり景色が見えなくなった頃には、話し疲れてローザもリディアも眠ってしまっていた。極端に寒くなる砂漠の夜空は、昼間の青さとひけを取らないほどに美しく、カインとアンナは、互いに話をするでもなく外を見ていた。

暗闇の中を星に照らされて、汽車が走る。同じ所に座っている時間は遅く長く感じられたが、それでもいつの間にか夜明けが近付いてくる。

カインが一人、眠たげな目を白み始めた窓の外に向けていた。

昨日とさほど変わりない風景が、朝の光にぼんやり青く、赤く染まる。黄色い砂の大地に、青と赤が混じりあう不思議な色調の空があいまって、夢のような風景をつくりだしていた。

やがてはっきりと朝日が昇り始める頃、眠っていたアンナが目を覚まし、目をこすりつつ嬉しそうに窓に顔を寄せると、進行方向を指差してつぶやいた。

「……みなさん……起きて、ほら、ダムシアンが……」

アンナが指差す先には、朝焼けに浮かび上がるダムシアンの街のシルエットが近くに見えた。独自の建築様式で作られた優雅な丸いドーム状の屋根を持つ建物がたくさん見える。もうすぐ着くようだ。



Home | Back | Next