第2章「ESCAPE」

....#11 大陸縦断鉄道


窓の外の雨はやがて夜に変わり、そして、朝が来る頃には一面砂の世界の中にいた。

未だ薄暗い朝靄に包まれた砂の海。砂漠など目にするのはいつぶりだろう。物珍しさにしばらくは目を奪われたが、半刻もすればすっかり慣れてしまい、あとはただ単調でつまらない景色に感じられるばかりであった。

(しかしまさか、こんなことになるとはな)

昨日の朝には予想だにしなかったこと。まだ目を覚まさないふたりに目をやる。リディアは確か、六才だといったか。改めて考えると、ローザ達姉妹がこの子供を見捨てられなかったわけがわかるような気がする。

ふたりとも、丁度この年頃に親を亡くしていた。

(お人好しもいいところだぞ)

二人ともまだ目を覚まさない。
眠っているローザを評して綺麗な人形みたいだと言ったのは、たしかセシルであったか。たしかにこいつは黙っている方が可愛らしく見える。でも、笑ったり怒ったりくるくる表情が動いている方がローザらしい。と、カインは思う。

(まぁ、俺もだけどな)

外はまだ随分と寒いのだろう、窓についた水滴を指でぬぐい、潤んだ太陽とピンク色に染まる薄い雲を見た。これから何が起こるのか、カインにはわからなかった。



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