第1章ミスト編

....#3 赤い翼



ミストの街の中心部にある、普段は人々の安らぎの場となっている広い公園。
着陸した飛空艇から空軍兵とともに降り立ったのは空軍総帥のセシルではない。
赤い軍服の兵達の中、ひとり黒い軍服を身につけた、金髪のプライドの高そうなその男は、 現近衛兵長ジェネラル・ボルドウィン大佐であった。

兵士達は人気のない石畳の街道を大股に通り過ぎ、今、ミストの長老宅の前にいた。
兵士達を前に年若い村の娘がひとり、おびえたような目で玄関を庇うように立っている。


「やめてくださいっ……長老は今……」


強引に中に入ろうとするジェネラルをとめようとした娘は、兵士によって銃をつきつけられ、言葉をとぎれさせた。


「おとなしく案内すれば手荒なことはしない。長老を出してもらおうか」


娘の正面に立ったジェネラルが冷たくそう言い放つ。


「ですから長老は今……!」


娘がなおも果敢に抗議の声をあげたその時、彼女が背中にしていた扉が開いた。すいとでてきたのはステラだった。


「ステラさん!」


娘は涙混じりの声で振り向いた。ステラは娘を励ますように微笑んでみせる。


「ありがとう、あなたは中にはいってていいわ。私が話をしましょう」


ステラは、娘を中に入れると静かに扉を閉め、それからゆっくりとジェネラル達の方に向き直った。


「私は自治議会のステラです。長老が伏せっておられることはお聞きになったはず。お話は私が伺いましょう」


「ほう……まあよかろう」



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